「恋」する人

第三者からしたらどう見ても、繊細さに欠けているように思える人が、「恋」する誰かにとっては、反対にやさしくて細やかな配慮をする人ととらえられている、なんていうことも起こるのだ。「恋」する人は、何かのきっかけでその人のスクリーンに自分の見たい物語を映してしまっているのだろう。
そして、はからずも陥ってしまう「恋」の理由には、一般的な「恋愛資源」だけでは説明がつかない、その人固有の「タイプ」の問題も関わっている。
経験値を上げるにはまず相手がいないとね。ここ→から候補をたくさん探せるよ。

漫画『 』のもう一人の主人公、ナナは、上京する前は、地元でバンドをやレンは無名のギタリストにすぎなかっていたレンと同棲をしていた。出会ったとき、ったが(のちにはタクミとともにトラネスで大成功を収める)、ナナにしてみたら、自分と共通する部分に強烈にひかれた。ナナは、父親が誰だかもわからずに生まれてきた子供で、幼少のときに母親にすら捨てられた。それから祖母に育てられたが、人
並みに愛されたとはいえず、自分の境遇に少しいじけているところがあった。レンもやはり捨て子で、施設で育てられた男だった。そのことをおおっぴらにしていることを知って、ナナは最初、自分の不幸を売り物にして同情を買おうとしているのではないか、と軽蔑を隠さなかった。ところが、目の前のステージに立ったレンは、そんな生い立ちはとっくに超越して、ただ輝いていた。その瞬間、ナナは彼にストンとハマってしまった。「あの夜生まれた感情を/どんな名前で呼べばいいのか/それは恋とかときめきだとか/甘い響きは似つかわしくない/嫉妬が入り混じった羨望とは一般的ないっぱんできかち価値からしたらあまりポイントが高いとはいえない。
けれど、ナナにとっては自分と同様、家族の情に恵まれずに大人になったレンに、同土的な感情を抱いたのだろう。そして自分と比べて、そんな人生の初期条件にとらわれずに堂々と自分の人生を生きている彼に、打ちのめされた。それがナナにとってのツボだった。共感と自己否定との間で、まるで自分のカギ穴にスペアキ を差し込まれたように、ぴたりとそれは組み合わさった。
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